第43話 戻ってきたシャンプー
WAFI MALL内 スーク・カーン・ムルジャンに「GOLDEN PEN」という日本人に人気のイラン人アーティストアミールさんのカリグラフィーの店がありました。
その近くにマモル君の石鹸の店はありました。
第43話はそのマモル君の話しです。
私がマモルと呼ぶのは発音がマモルだったので会った時からず~っと彼のことをそう呼んでいたシリア出身の青年です。
年齢が息子と同じこともあり私たち夫婦はいつのまにか息子に思えるようになった。
私がショップで初めて会った日、日本人と挨拶すると即座に
「アメリカは好きか?」と聞かれた。
きれいな石鹸に惹かれて入った店で私は思いがけない質問にたじろぐばかりで返事ができなかった。
すると、彼は「アメリカは長崎、広島に・・・」と原爆のことを言った。
その口調はハッキリとアメリカを悪く言わない私だったがとても穏やかだった。
そんな国際情勢からの会話だったが、よく夫ともどもお付き合いした。
何度か買い物した中で忘れられないユーモアがあった。
夫の髪の毛がなんとなく少なくなっていくように感じた日、彼は夫に
高級なオイル勧めた。
私がそれを使うと夫の髪はどうなるかを聞くと、「明日フサフサになる」と両手でゼスチャーを交えて言う。(爆笑だった)
信じがたいけど買うことにした。
もしかするとほんとに効果があったのかもしれない。帰国の際かろうじて
髪の毛は残っていた。
私はレジデンスの友人にもマモル君を紹介したりした。
行くといつもインスタントのコーヒーを入れてくれた。
ある日彼は別の店舗に異動になった。
場所はアルグレアで私はアルグレアに住む友人を訪ねた際、新しい彼の仕事場に立ち寄った。
彼はとても喜んで同じ店のスタッフに「日本人の友人」と私のことを紹介したりした。
楽しい会話の後、シャンプーや石鹸をいくつか買って別れた。
家に着いて気付いた。買い物した袋がないことに。
どうやらメトロに忘れたようだ。
私はレジデンスの最寄り駅Dubai Healthcare Cityへ行くことにした。
窓口の担当者に忘れ物の内容や入れ物の袋の色とか聞かれた後で、「見つかった場合は携帯に電話します」と言われた。
私のその一連の行動を聞いた夫は「えっ?!行ったのか?ひとりで?」っていつものように「何て言ったのか?」と聞く。
私はそんなふうに聞かれてもその場ではなぜか言葉は出てこない。
でも・・ちゃんと通じているだ。
その証拠に携帯に駅のスタッフから連絡がきた。(@_@;)!(^^)!
うれしくてひとりですぐに出かけた。
ありました!!
感激!!ドバイってほんとにスゴイ。世界一安全なUAE。そう思った。
たどたどしい英会話の私に笑顔で向き合う窓口担当者・・ほんとに親切な国だと改めて感じた。
それだけではなかった。
過去に夫の落とした財布もタクシードライバーが届けていたこともあった。
・・・私の英語もなかなかいいじゃん。!(^^)!
その後、マモル君はオマーンとの国境に位置するアル・アインへ転勤になったと電話があった。
夫とそこへも週末旅行かねて彼に会いに行った。
まるで息子に会いに行くようだった。
そこが最後となった。
シリアにいる親のこと事故で亡くなった弟のことをよく話していた。
シリアが一日も早く平和になるよういつも祈ってやまない。
*58歳の英語の話せないオバサンの3年間(2011年3月~2014年
3月)のドバイ生活の記録です。
*国際コミュニケーション キーワードは ・度胸 ・好奇心 ・サービス精神
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